試験研究の成果

【食料生産地域再生のための先端技術展開事業】
増収技術と省力栽培技術を導入したシャインマスカットの栽培体系

分  野
果樹
品  目
シャインマスカット
技術概要
 ブドウ「シャインマスカット」生産者の収益性向上を図るため,光反射シートを利用した増収技術と省力栽培技術を導入した栽培体系を開発しました。

  1. 光反射シートの敷設,展葉10枚時のフラスター液剤処理,花穂整形器利用,果粒軟化期以降の摘心作業の省略技術を導入した新技術導入栽培は,設定着房数を慣行の3割増やしても作業時間は慣行と同等で収量が3割増加できます。
     表1 新技術導入栽培の栽培管理
    光反射シート設置 花穂整形作業 新梢・副梢管理
    開花前後 ジベレリン処理後 果粒軟化期前 果粒軟化期後
    開花前に棚下へ光反射シートを敷設する。 花穂整形器を利用。 展葉10枚時にフラスター液剤1,000倍液を全面散布。
    開花始期に未展開葉を摘心。
    新梢先端から発生した副梢は主枝の中間地点まで伸ばして摘心する。
    その他の福梢は房基2~3枚、房先1枚残して摘心する。
    摘心作業を行わない。

  2. シャインマスカットH型整枝・短梢剪定樹に光反射シートを開花前から収穫後まで棚下に敷設することで,棚面に対して角度の大きい葉の割合が増加するため,棚下に光が透過しやすくなり,果房周辺の積算日射量が増加します。

  3. 新技術導入栽培の果実品質は,糖度と果皮色が慣行栽培よりも高くなります。

  4. 1房当たりの花穂整形時間は,花穂整形器の利用により慣行栽培に比べて24.8%短くなります。

  5. 新技術導入栽培の1樹当たりの新梢管理時間は,フラスター液剤散布によりジベレリン処理後の摘心作業が慣行栽培に比べて短くなります。
    また,顆粒軟化期後の摘心作業が省略されたため,作業合計時間は慣行栽培と比べて29.8%短くなります。

  6. 新技術導入栽培の費用は,光反射シートや花穂整形器などの資材が増えるため,慣行栽培に比べて増加しますが,収量が3割程度増加するため,利潤が慣行栽培より多くなります。
     表2 栽培方法の違いが10a当たりの作業時間に及ぼす影響(平成28年~平成29年) (単位:時間)
    試験区 剪定 花穂整形 ジベレリン処理 摘粒・摘房 新梢管理 袋掛け 防除 施肥・土壌改良 光反射シート設置 合計
    新技術導入栽培 5.5 39.6 21.5 131.6 96.8 21.5 11.7 4.5 19.8 352.5
    慣行栽培 5.3 42.0 18.4 101.8 138.1 18.0 13.9 4.4 341.9
    有意差 ns ** ** ns ns   ns
    ※値は平成28年と平成29年の平均値。
    ※労働力1名として計算。
    ※t検定で**は1%水準で有意差あり、*は5%水準で有意差あり、nsは有意差なし。

  7. 光反射シートを開花前に敷設した場合,チャノキイロアザミウマの防除効果が期待できるため,第1世代成虫飛来時期の6月中旬の殺虫剤の散布を減らすことができます。
     表3 成園時の経営収支 (単位:10aあたり円)
    新技術導入栽培 慣行栽培 備考
    粗収益 3,8011,300 2,827,650  販売単価は仙台市場への実績から1,500円/kgとした。
    費用
     肥料費 20,000 15,385  養液土耕1号
     光熱動力費 10,438 10,438
     農業薬剤費 21,342 27,000  雨除け栽培のデータ
     諸材料・小道具 226,440 164,080  果実袋、植調剤、花穂整形器、剪定鋏・鋸 等
     労働費 317,250 307,710  900円/時間
     減価償却費 834,983 834,983  雨よけハウス、苗、農薬散布機、運搬車 等
     販売費用 225,750 175,000
    合計 1,656,203 1,534,596
    利潤 2,145,097 1,293,054
    ※平成28年と平成29年の作業時間や収量データを元に作成。
関連情報
担当部署
農業・園芸総合研究所 花き・果樹部(電話:022-383-8132)

 宮城県農業・園芸総合研究所
  (企画調整部 企画調整チーム)
  〒981-1243 宮城県名取市高舘川上字東金剛寺1
  TEL:022-383-8118
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